白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 初めて見る一式は、わざわざ運び込んでくれたのだろう。

 緩いカーブを描きながら三つ脚に別れた柱で支えられた天板は、白詰草と四葉を組み合わせた図柄が端を縁取っており可愛らしい。そうと気がつくとテーブルの脚も椅子の脚も、白詰草と四葉の意匠が刻まれていた。


 いちばん最初の夕食後のように、ダイニングテーブルを挟んでのお茶会だと思っていたから、誰かは分からないけれど気を回してくれたことが嬉しかった。

「可愛らしいテーブルセットですね」

「お気に召していただけましたか」

「はい。とても」

 やはり先に来ていたシェイドが椅子を引いてエスコートしてくれる。

 それも予想外のことだ。

 お姫様のような扱いに頬が熱を帯びる。夜会で手を繋いだ時に感じた強いときめきとはまた違う、穏やかな喜びがじんわりと心を満たした。


 シェイドが正面に座るのを見計らい、オードリーがクッキーを綺麗に並べたお皿を置くとカップに紅茶を淹れはじめた。

 クッキーに目を向けていたシェイドが何かに気がついたような表情を見せる。

「早速、いただいてもいいですか」

「も、もちろんです。召し上がって下さい」

 尋ねられて答えれば、伸ばされた右手がマーマレードを挟んだクッキーをつまんだ。


 やっぱり、シェイドが選んだのもマーマレード入りだった。

 そんな共通点に想いを馳せ、ふと気がつく。

 シェイドが取ったのは、ロゼリエッタが形を作ったクッキーだ。何故なら――。

「このクッキーを型抜きしたのは、あなたですか?」

「そ……そうです」