白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

「ロゼリエッタ様? まだお加減が優れませんか?」

「ううん」

 心配そうに尋ねられて首を振った。


 いつだって優しい表情の彼女に、不安を抱える胸が揺らぐ。

 今のロゼリエッタが頼れるのは彼女だけだ。

 迷惑かもしれない。でも、ほんの少しで良いから相談に乗って――話を聞いてくれるだけでもいい。病み上がりで特に身も心も弱っているからか、そんな気持ちになった。

「――あの、聞いて欲しいことがあるの」

「私でもよろしければぜひ、何なりとお話し下さいませ」

 柔らかく微笑むオードリーにアイリの笑顔が重なる。


 オードリーはどこまで知っているのだろう。

 深くを知らない可能性も考え、ロゼリエッタは慎重に言葉を選んだ。

「クロ……シェイド様と、普通にお話しをしたいの。せめて食事の時だけでも」

 侍女である彼女からシェイドに、態度を軟化してくれるよう進言して欲しいなんて頼んだところで無理だろうし、思ってもいない。

 でも口にしたことで、自分のしたいことがはっきりと見えた気がした。


 シェイドであることを選んだクロードは、もう二度とロゼリエッタの元に帰って来てはくれない。

 だけどそれでも、また会えた。

 ならば兄の友人として遊びに来てくれていた時のように接したい。


 片想いなのは慣れている。

 ずっとそうだった。

 そしてこれからもずっと。


 多くを望みさえしなければ、最低限と言うには過剰なほどの優しさを残酷なまでに与えてくれる。姿や名を変えたって、彼はそういう人だ。