白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 その日の夕食時はいつになく空気が重いような気がした。

 理由は分からない。ただシェイドの機嫌があまり良くないように見える。好かれてはいなくとも嫌われることが怖くて、ロゼリエッタは無言のまま食事を進めた。


 普段の夕食も会話が弾んでいるわけではない。だけど今日は比較にならないほど食事に味を感じなかった。

「――ご結婚は」

 そうして作業的にフォークを口に運んでいると珍しくシェイドが話しかけて来た。

 食事の手を止めて視線を向ける。ほんの一瞬目を合わせた後、シェイドはさりげなく目を逸らしながら口を開いた。

「ご結婚の予定は決まっているのですか」

 誰との?


 そう尋ねかけ、ダヴィッドとのことを言っているのだと気がつく。

 途端に心がささくれ立つようだった。嫌われまいと思っていた自分が愚かに思えて、可愛げのない棘のある答えを返したくなる。

「一週間後です。――そうお答えしたら、その日までに私が領地に行けるように配慮して下さるのですか」

 気の強いロゼリエッタの返事にシェイドは一瞬目を見開いた。それからゆっくりと首を振る。

「残念ながらそういうわけには参りません」

「そうですか。残念です」

 グラスに入った冷たい水を煽り、顔を背けた。

「――ロゼリエッタ嬢」

 一度可愛くない態度を取れば、どんどん積み重なって行く。

 なのに名を呼ばれると、蜜に誘われる蝶のように視線を戻してしまう。仮面の下の、見慣れているはずの素顔を見たくて焦がれた視線を向けてしまう。

 シェイドは何故かひどく苦しそうな顔で言葉を紡いだ。