白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

「例の侍女とは別件でロゼリエッタ嬢もレミリアに匿ってもらうこともできた。それをしたくないと言ったんだ。何を思って自分が傍にいることを選んだのか、それは自分がいちばん分かっていることだろう」

 シェイドは頷いた。

 頷かざるをえなかった。

 そこは、クロードが譲らなかった部分だからだ。

「それとだな」

 マーガスは急に顔をしかめた。

 ひどく苦々しい面持ちで、盛大な溜め息と共に言葉を続ける。

「こちらの国では――同意書、と言う制度なのか? ともかく、君たちが婚約を解消したいと互いの署名を記した書類を見て、我が婚約者殿が非常にご立腹されておられる」

 ロゼリエッタは同意書に署名し、提出した。


 それを願っていたのに、実行に移されたと知ると胸が鈍く痛んだ。

 だがレミリアが腹を立てているというのはよく分からない。

 彼女は彼女なりにロゼリエッタを妹のように思っていたようではあるが、婚約解消の後押しをしたのは王家だ。

「正直に申し上げて、それに関しては八つ当たりかと思いますが」

 このままでは年若いロゼリエッタの人生を縛りつけてしまう。


 グランハイム公爵家の建前を飲み、カルヴァネス侯爵家に婚約解消を勧めた。王家からの進言がなければ、あるいは婚約は続行されたままだったかもしれない。


 だがそれこそ、シェイドの八つ当たりだ。