「それでも今さらどんな顔をして、ずっと愛しているだなんて伝えろと仰るのですか」

「良いじゃないか。ずっと、なんだろう。今までも、そしてこの先も、彼女しか愛せないのなら結構なことだ。ありのまま正直に伝えて、手元に置いておけばいい。それを受け入れるかどうかはロゼリエッタ嬢が決めることだ。彼女の気持ちを君が型にはめる権利はない」

「――今さら、です」

 なおも頑ななシェイドをマーガスは鼻で笑った。

 普段の彼は決して権力を笠に着たり、人を見下すような言動は取らない。わざと炊きつけようとしているのだとシェイドにも分かる。だから当然、腹が立ったりもしなかった。

 マーガスは腕を組み、尊大な態度で告げる。

「今さらだとか、まだ成人も迎えてない若僧が何を言う」

「殿下もまだ二十二で若僧扱いされているではありませんか」

 腹は立てていない。

 だが反論はした。

 マーガスの言っていることは正しく、自分が意地を張っているだけなのは分かっていて、それを認めたくはなかったのだ。

「だが三歳の差は大きいだろう。君がロゼリエッタ嬢をいつまでも子供扱いしているようにね」

「それは、」

「案外、君より三歳年下のロゼリエッタ嬢の方が大人だったりするかもしれないな」