白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

「誰の指示で動いたのかは一切喋っていないのですね」

「騒ぎを起こした目的は話してくれたが、向こうもロゼリエッタ嬢を手駒にする為のカードをまだ持っているんだろう。それを使われるのを恐れてか、肝心な部分は無言を貫いているよ」

「目に見えて疑わしいだけに、巧妙に尻尾を隠してはいるようですね」

「我が王家に怨恨のあるこの国の貴族など、君の母君の元婚約者が真っ先に疑われる立場だからな。その辺りはさすがに抜かりはないのだろう」

 非常に厄介な相手だよ。

 マーガスは溜め息と共にそう吐き出した。それから一縷(いちる)の希望を込めて続ける。

「とは言え我が国で起こったクーデターに関わった人物は、叔父上以外は全員捕まっている。こちらの国の誰と繋がっているのか、割れるのも時間の問題だろう」

「そうであれば良いのですが」

 シェイドも同感だとばかりに頷いて次の疑問を振った。

「白詰草を模した印璽(いんじ)の入手も、やはりアイリ・サーバスを通していたと見て間違いはないのですか」

「複製したら足がつくだろうからな。そもそも、あの手紙はクロード……君相手に送るものとして、彼女が書いたものらしい」

「僕に?」

 捨てたはずの名前に思わず反応し、シェイドは眉をひそめた。

「君がロゼリエッタ嬢と話し合う機会が欲しくて書いたのだと。それが悪意によって私の元に届けられてしまったわけだけどね。もちろん、私の暗殺が企てられていることも知らなかったようだよ」

 アイリの証言を一字一句思い出しながらマーガスは答える。それでシェイドの疑念が晴れることはなく、むしろ新たな種を芽吹かせた。