ロゼリエッタの周囲の人々がそうではないだけで、中にはそういう人物も確かにいるのだろう。

 だから何らかの手段を用いて印璽を入手し、利用した。シェイドはそう言っているのだ。

「でも、どうして私を利用しようと……?」

「おそらく、あなたがレミリア王女殿下に近しいからでしょう」

「レミリア王女殿下に?」

 問いかけてから、ある事実に思い至った。


 マーガスが滞在中、彼に何かあったとしたらこの国の警備態勢に非難が集まることは想像に難くない。

 そしてマーガスは母国で王位継承争いの真っ只中にいる。レミリアは国内の貴族以上に有用な後ろ盾だ。対立する貴族たちにとっては最も面白くない存在だと言っても良いだろう。


 だけど国力がほぼ同程度である以上、隣国の貴族がレミリアを貶めることはできない。そんなことをしては国同士の戦に発展しかねなかった。


 戦になれば内部分裂などしている余裕はなくなる。王位を争いながら他国と戦をするなど、どちらが勝つか目に見えていた。結果、祖国が滅ぼされてしまってはその玉座には何の意味もない。下手をしたら王族は全て処刑されることも十分にありえる。


 とは言えマーガスと敵対する勢力にとって、レミリア及びこの国が疎ましい存在であることも事実だろう。要は自分たちに一切の非がない状態へ持ち込めば良いのだ。そうしたら逆に、レミリアを追い払うこれ以上ない建前が産まれる。