白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

「ただ、あなたが殿下に接触する機会を得ようとしていた。その事実だけが必要だったのでしょう」

「違います! このような手紙を私は差し上げてはおりません……!」

「分かっています。全て分かっているうえで、殿下はあなたを僕の監視下に秘密裏で置くことを望まれたのです」

 シェイドの静かな声を受け、ロゼリエッタは瞬間的に感情を露呈してしまった自らを恥じた。蝋燭が燃えて短くなったことで、やはり炎の向こうではあってもシェイドの顔が夕食時よりもよく見える。

 その表情はロゼリエッタが声を乱しても変わりなかった。何らかの反応を期待していたわけではない。それでも勝手に心は傷つく。紅茶を飲み、カップを置くふりをして俯いた。


 シェイドに、どうして欲しいのだろう。

 分からない。

 分からなくなって、何を言えば良いのかさえ見失ってしまう。

「ロゼリエッタ嬢」

 名を呼ばれて顔を上げる。目が合うとシェイドはどこかほっとしたように表情をわずかに緩ませた。いや、そう見えたのは蝋燭の炎のせいなのかもしれない。

「いかに稚拙なやり口で本人には何ら痛くないものでも、他人から見たらそうであるとは限りません。たとえ火のない場所であろうと、無理やり煙を出して貶めようとする卑劣な人物は存在します。残念ながら……こと王位を巡る貴族たちはそういう人物の集まりなのです」