ロゼリエッタは口ごもりながらも小さく首を振った。

 白と淡いピンクを中心に、普段から好んで着ている色ばかりだ。フリルやレースにリボン、刺繍といったデザイン一つ取っても少女らしい要素が入っている。好みではないどころか、どれも可愛らしくて好ましい。


 だからこそ、不安と疑問が湧き上がる。

 こんなにたくさん、いつ用意したと言うのだろう。既製品を買いつけたのだろうけれど、それにしても相当な数だ。

「どうして、こんなにも親切にして下さるのですか。私の着るものなど別になくったって」

「年頃の令嬢が何日も同じ服を着たままというわけには行かないでしょう」

「お名前やお姿が変わっても、私に何もお話しして下さらないところは変わらないのですね」

 誰に会うでもないのに、おかしなことを言う。

 適当な言い訳であしらわれた気がしてしまって、ロゼリエッタは泣き笑いを浮かべるとシェイドに背を向けた。

「シェイド様が(おっしゃ)るように、無力な私はここから一人では家へ帰ることもできません。ですから何もせずおとなしくしています。王太子殿下を手にかけようとした、まるで覚えのない罪に関しても、私が話せることはいつだって全てお話し致します。だけど――」

 一度口を(つぐ)み、目を伏せる。

「今日は色々なことが起こりすぎて疲れてしまいました。叶うのなら少し休ませて下さい」

「――分かりました。すでにベッドのご用意も済ませてありますから、そちらで遠慮なくお寛ぎ下さって構いません」

 シェイドは何の感情も読み取れない声で答え、ワンピースをクローゼットに戻した。

 たくさんの服は気を遣ってのことなのかもしれない。でも、何故そのような気を遣わなければいけないのか。理由を聞かない限りは素直に喜ぶこともできないのも事実だ。

「何か必要とあらばお呼び下さい。すぐさま駆けつけます」

「お心遣いありがとうございます。でも大丈夫です。シェイド様のお手を煩わせるようなことは決して致しません」

「では夕食はあなたの目が覚めたらにしましょう。胃に優しいものを用意させます」