白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

 彼にとってロゼリエッタは何の関係もない他人だ。それどころか主の命を狙った罪人である。優しく接する理由など、どこにもない。

 でもロゼリエッタはマーガスに危害をくわえようなんて考えたこともなかった。信じてもらう余地さえないことはとても苦しく、何よりも悲しい。

「騎士様に危害を与えるつもりなどありません」

「僕に何かをされるのが困るのではなく、あなたがご自分に何かをされては困るのです」

「マーガス王太子殿下に害を成そうとした罪深い身であってもですか」

 生まれて初めて皮肉が口をついた。

 騎士の目がわずかに細められる。ロゼリエッタの唇を、自嘲気味な乾いた笑みが彩っていることに気がついたのだろう。


 以前なら醜い姿を見せたら嫌われると思っていた。だからどんな時だって必死に押し殺し続けていた。

 でも、もう愛されることはない。その事実を受け入れてしまえば気持ちはずいぶん楽になった。ましてや目の前にいるのはクロードではないと、彼本人が明言したのだ。どれだけ本当のロゼリエッタを見せたって、何がどうなるわけでもない。


 愛されることも、嫌われることも、もうないのだ。

 ロゼリエッタを目的の地に連れて行けば最後、会うことだって二度とない。

「些細なものであってもあなたに傷を負わせたくない、それだけです」