レティシアの初恋の話を聞いてから数週間後、フィオナとエヴァンはいつも通り特殊捜査チームの部屋にいた。

「……」

事件の調査依頼はシオンやサルビアから出されていないため、フィオナは買ったばかりの小説を読んでいる。その横顔を見たエヴァンが頰を赤く染め、フリージアが揶揄うようにエヴァンを小突いていた。

「フィオナ、ちょっといい?」

小説を読んでいるフィオナの肩が叩かれ、フィオナが振り向けばレティシアがいた。その手にはくしが握られている。

「髪、アレンジしてもいい?練習したくて……」

そう言うレティシアを見て、フィオナは自分の髪に触れる。特別な手入れなどはせず、二ヶ月に一度髪を整える程度の髪は特別綺麗なわけではない。むしろ、レティシアの方がとても綺麗な髪をしている。

「構いませんが、レティシアさんが求めるような髪ではないと思います」

「いいの!あたしがお手入れしてあげる!」

レティシアは嬉しそうにフィオナに笑いかけ、髪を軽く濡らしていく。楽しそうに髪に触れるその顔を見ていると、フィオナは自身の仕事のことを考えてしまった。