気づくと自分は、キラキラと光る水の中にいた。
その中にはたくさんの、自分に似た生き物がいた。形はあまり似ていないが、ヒレも尾もある。

皆一心に、ある場所へ向かっていく。

(あれは…何だろう…?高い所からたくさんの光る水が落ちて……皆あれに向かって……)

たくさんの者が、登っては落ち、また登る。


(…呼ばれた……?)

確かに聞こえた。
あの子の声が…あの遥か…上……

登れるだろうか、自分にも…。
周りは自分より体が大きく、落ちてくる水の勢いはあまりに強い。
それでも…あの子が呼んでいるなら…待っていてくれるなら……!

自分も夢中で泳いだ。
たくさんの者達が自分を追い越し、我先にと、激しく落ちてくる水へと向かう。
何度も水を登ろうとしたが周りの者たちが阻み、小さな自分は落とされてしまった。

(ダメだ…あんなに呼んでくれているのに……ん?)

ふと目を逸らすと、近くの場所にも似たような場所があるのに気づいた。

(ここにも…でも……)

たくさんの者がいるそこよりも、誰もいないが水の勢いは激しい。

(体が…千切れてしまうかもしれない…でも、皆がいるところでは、自分はあの子のところまで行けないかもしれない…それなら……!!)

寒くはなかった。まだあの子の手の温かさが自分に残っている気がした。


自分は必死で泳いだ。体が千切れそうになる痛みに耐え、落ちる水の上を目指し、何度も何度も……


水の勢いで何も見えないまま、何百かの挑戦で上まで登り切ると、途端にまた体が浮き上がった。

体は先程と同じく温かいまま、光に包まれた。

すると、自分の尾が長く伸び、力強い鱗に変わった。口の中には硬い歯が生え、ヒゲも伸び、ヒレが伸びてあの子にもあった手に変わった。

(ああ…あの子が見せてくれたものにそっくりだ…これが『龍』……)

いつの間にか、自分の手の中には光る玉があり、雨を降らすこともできるようになっていた。

(これならきっと、誰かの役に立てる…!あの子にも、自分を見つけてもらえるかもしれない…!!)

「ありがとう…何年も、大きくなるまで育ててくれて…話しかけてくれて……また、いつか……」

龍に変わった金魚は、いつまでも地上を見守った……