「オレリアは私が聖女になることを望んでいません。だから、そのようなことを企む必要もないので無関係です」
「強欲なあの女のことだ、今更ながら大聖女という名誉が惜しくなり、目をかけている娘を利用して手に入れようとしていてもおかしくない」
「どうかな。本当に聖女の座が惜しくなったのなら……あの婆さんの性格なら大聖女の元へ直接乗り込んで力尽くで奪っていくんじゃないか?」
テド院長に口を挟まれ、カルバード学長はほんの一瞬確かにといった表情を浮かべるも、口には出さぬままにため息をつく。
「ともかく、大聖樹による選出などされていないと、もうすぐロレッタ様が判明させるだろう。すべてはそれから判断なされよと国王様にお伝え願おう」
「もし本当に大聖樹がエミリーをご所望だとしたらどうする、平伏して詫びるか?」
「馬鹿げたことを」
テド院長と数秒睨み合った後、カルバード学長は「話は以上だ。失礼する」とソファーから立ち上がり、不満げに応接室を出て行った。
「大聖女ロレッタのすごさは俺も理解しているが心酔しすぎだろ。一番の味方となるべき聖女院がこれではエミリーが気の毒だ」


