花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!


軽く頭を下げはしても歩みを止めずに、そのまま列の後ろを歩き続けた。

やがて、ぽっかりと口を開けたような円形の草地にたどり着く。

土がむき出しとなったその真ん中にどっしりと根をはり、太い幹から空に向かって伸びた枝には先端が尖った葉と、黄色の小さな花が塊となってたくさん咲いている。

そして葉や花の隙間に見え隠れする、深緑色の細長い果実と魔石が内包されている小さな薄茶色の殻の実。

それらは光の加減できらりと輝きとても幻想的で、目を奪われる。

道中、縦に並んでいた生徒たちは、「近づき過ぎては駄目です!」とビゼンテの言葉を守って一定の距離を置きながら大聖樹を取り囲んでいく。

隣にやって来たケビンに「すごいな」と話しかけられ、エミリーは同意するように頷き返す。


「今だけはエスメラルダの気持ちが分かるわ」


大聖樹を見上げて呟いたエミリーに、逆隣にいるリタから「確かに」と賛同の声が上がった。

遠くから見れたらそれでいいと思っていた。

しかし、こうして目の前にして神々しくすら感じるその姿に圧倒されてしまえば、間近で見れたことに感謝の気持ちが湧き上がる。


「エミリー・メイルランド。どうですか大聖樹は? 素晴らしさに心が騒いでいることでしょう。聖女クラスへ心が傾きませんか?」