「おやおや。結構な人数でやって来たようだ。ロレッタにとってエミリーは自分の地位を脅かす存在だから本気で探りを入れるつもりなのだろう」
「私、気付かれたかしら」
「その姿だから半信半疑だろうけど、エミリーのことを探られたら勘付かれるかもしれない」
ソファーから身を乗り出し気味のエミリー振り返り見て、オレリアは難しい顔で予想する。
「うかうかしているとロレッタが攻撃を仕掛けてくるよ。立ち向かうにも、身を隠すにしてもすぐに動いたほうがいい」
森の中で刺客の男が襲いかかってきた一瞬の光景が脳裏に蘇り、エミリーは震える自分の体を両手で抱きしめた。
命を奪われるかもしれないと考えてしまえば、立ち向かうのがどうしようもなく怖くなる。
逃げ出す方が簡単かもしれない。
けれど、そうしたらみんなはどうなるとエミリーは唇を噛む。
自分を匿ってくれたオレリアにアデル、そして店のみんなが被害を受けるかもしれないのだ。
オレリア商会のみんなだけでない。逃げればモースリーだって見捨てたことになる。
贈った魔石は消耗品、いつか効果は切れて大聖樹はまた枯れ始める。
そのせいでレオンやリタが傷つけば、逃げたことを必ず後悔するだろう。


