花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!


しかし、通りの様子はいつもと変わりない。

どこから見られているのか分からない恐怖にエミリーは身を震わせつつ、アデルを追いかけるように足早に門の内側へ入っていく。


「さっきの男が何処かに潜んでいそうで、なんだか怖いわ」

「いますよ。それもお仲間さんも一緒に」


エミリーの不安にアデルはキッパリと断言して、門の鍵をきっちり閉めると、エミリーを抱きかかえて屋敷の中へ。

急ぎ足のままオレリアがいるだろう居間へ飛び込んでいくと、ソファーに座って足元にいる土兎たちと遊んでいたオレリアが顔をあげ目を丸くする。


「どうしたんだい? 騒がしいね」

「オレリア様、ロレッタの護衛の男が姿を現しました」


アデルの報告にほんの一瞬目を見開くも、オレリアはゆっくりと息を吐いて立ち上がり、ソファーから窓際へと進んでいく。


「ロレッタに解かれてしまったようだね」

「男はレオン様のバングルのことを聞いていたようです」

「魔石へ浄化効果を付与したのが誰か、ついでにエミリーが私に助けられて生き延びているかどうかを確認しに来たんだろう」


アデルはエミリーをソファーにおろしてから、自分もオレリアのそばへと歩み寄る。