「もちろん、どこの馬の骨かも分からない男に軽々しく話はできないから、知らないと突っぱねてやったけど」
「オレリア様に報告すべきね。店のみんなにも、何を聞かれても話さないようにと徹底しておいて」
「わかった」とアルフォンは頷いて、店の奥に入っていく。
エミリーとアデルも当初の目的である薬草庫へ向かって歩き出すと、ちょうど庫内から大きくて平たい網カゴを持ったダリウスが出てきた。
すれ違いざまにいつも通り睨みつけられるが、アデルがそばにいるからかエミリーに対して嫌味の言葉は発しない。
薬草庫に入る前にアルフォンがみんなに話をする声が聞こえてきて、エミリーはちらりと振り返る。
不機嫌な顔のままアルフォンの話を聞いていたダリウスが、不意をつくようにエミリーへと視線を移動させた。
向けられたのは嫌悪感たっぷりの眼差しではなく、まるで疑っているかのよう。
嫌な予感を覚えたエミリーは思わず顔を逸らし、薬草庫の中へと逃げ込んだ。
必要な薬草を急いでかき集めてカゴをいっぱいにし、エミリーとアデルはオレリア商会を出た。
門の鍵を開けているアデルの横で、エミリーは突き刺さるような視線を感じ、寒気を覚えながら周囲を確認する。


