花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!


アデルがあっさり答えると刺客の男はムッと表情を歪めたが、やがて小さく笑って「どうやらそのようだ。失礼した」と間違いを認めた。

そこで話が終わるかとホッとしたのも束の間、男の視線はアデルからエミリーへ移動した。


「そこの子供、名前は?」


問われるも、エミリーは三歳児っぽくアデルの足の後ろへと隠れ、黙りを決め込む。

「すみません。この子人見知りなもので」とすぐさまアデルがフォローを入れる。

刺客の男はアデルと俯いているエミリーへと交互に視線を向けた後、「失礼する」とだけ呟いて店を出て行った。


「なんなんだあの男は。薄気味悪いな」


ぼやきながらアルフォンはエミリーのそばに歩み寄り、もう大丈夫だよと言うように小さな肩に触れる。

アデルも扉の方へと警戒の視線を向けながらアルフォンに小声で確認する。


「あのお客様といったいどんな話を?」

「客じゃないよ。数日前までレオン様がここに滞在していたかを確認して来て、それからレオン様が持っているバングルの魔石に魔法付与を施したのはオレリア様かと聞かれたよ」


エミリーたちを除いて、オレリア商会の中でレオンが王子だと知っているのはアルフォンだけ。そのため、アルフォンの声も自ずと小さくなる。