花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!


目の前に立ってじっと見下ろしてきたのは、自分を毒矢で殺そうとしたあの刺客の男だった。

エミリーの震える手を、アデルが「行きましょう」と力強く握りしめる。

怖い。けれど、怯えているのを悟られたら不審に思われると、エミリーは明るく「うん」と返事をし、何気なさを装いつつ男から顔をそらす。

この男はオレリアに記憶をすり替えられ、私が死んだと思っている。

だから子供の姿になっているなど思いもしないはずだ。

そう自分に言い聞かせながら、アデルに手を引かれて俯きがちに歩き出した。

しかしすれ違いざまに男から「おい」と声をかけられ、立ち止まるのを余儀なくされる。


「はい。お客様いかがなさいましたか」

「この前はどうも」


怒りの滲んだ声音にエミリーは怖気付きそうになるも、アデルは毅然とした態度で刺客の男への対応を続ける。


「いつも当店をご利用くださりありがとうございます」

「おいおい、しらばっくれるなよ。約三ヶ月前、森の中で会っただろ?」

「三ヶ月前ですか? お会いした記憶がありませんが……、もしかしたらどなたかとお間違えかもしれません」