手紙は『返信は不要』と締められていた。

『レオン・エイヴァリー』と最後に綴られた愛しい名前を指先でそっと撫でて、エミリーは覚えた違和感にわずかに首を傾げる。


「私を想っての言葉が嬉しいのに、どうしても焦っているように読めてしまうわ」


手紙が終わりに近づくにつれて、まるで大急ぎで書いたかのように文字が乱れている。

エミリーが不思議に思っていると、オレリアが「ロレッタのことだから」と前置きして考えを述べ始める。


「自分の可愛い孫との結婚話から逃げられて、面白くなかっただろうね。今頃レオンはロレッタの監視下に置かれ自由に動けない状態だったとしてもおかしくない」


エミリーは顔を強張らせ、再び手紙へと視線を落とす。

『正直、動きづらい』のひと言が、常に誰かに見張られているため出た言葉だったとしたら、状況が落ち着いたとしてもすぐに会いになど来られないかもしれない。


「ロレッタの孫を守れと命じられている可能性も捨てきれないね。そのまま婚約させられるかもしれない」

「ちょっと待って! それは絶対に嫌!」

「私にはこんな風に読めるね。だからどうか待っていて欲しい。俺の心はあなただけのものだ。たとえ、他の女性と結婚することになろうとも」

「不吉なことを言わないで!」