聞かされたモースリーの状況にレオンの顔が一気に強張っていく。エミリーも表情を曇らせながらレオンの手を握りしめた。


「獣に襲われる者も増えてきたため、先日、モースリーアカデミーの高等部だけでなく中等部と初等部にも、そしてエトリックスクールの薬師クラスの生徒たちにまで、武器を持って獣を討伐せよと王命が下されました」

「武器を持てですって、そんなの無謀だわ!」


たまらずエミリーは叫んだ。

モースリーアカデミーの高等部の生徒ならなんとかなるかもしれないが、薬師クラスは剣術を得意とする集まりではないし、ましてや中等部や初等部なんてまだ子供だ。


「俺もそう思います。レオン様、お願いです。命令を取り下げるよう国王陛下を説得してください」


フィデル副団長の悲痛な訴えを受け、レオンは「どうして父上が」と歯痒そうに唇を噛む。


「国王陛下じゃない。おそらくそれはロレッタの指示だ。だって陛下は学生たちこそが我が国の未来だと私なんかに熱く語るような男だよ。ロレッタとの間で何かあったのかもしれないね」


エミリーは膝から降りて、笑顔でレオンと向き合う。