「こっちに来いってことかしら」
エミリーの疑問にレオンは「かもな」と呟き、エミリーを抱きかかえて土兎を追いかけ歩き出す。
オレリアとフィデルも何事だと言った顔でレオンに続いた。
温室に近づいて行くと、白い土兎が横たわっている姿を見つけ、レオンは小走りになる。
その傍らでエミリーはレオンの腕から降りて、柔らかな体にそっと触れた。
「足を怪我しているわね。噛まれたような跡だわ。獣犬かしら」
「その可能性はあるな」
レオンは鉢植えが倒れていたり、低木が変に傾いていたりと、庭の様子を注意深く観察しながらエミリーに同意する。
エミリーはすぐに患部に手をかざし、回復の魔法をかける。
すると程なくして、白の土兎は垂れていた耳をぴょこりと起こして、恐々と歩き出した。
茶色の土兎が白い土兎に寄り添うかのような仕草をみせ、エミリーはふふっと微笑む。
「あなたが逃げずにそばにいたから、この程度の傷で済んだのかもしれないわね。この子にも浄化の魔石をつけてあげようかしら」
エミリーは立ち上がり、後ろに立っているオレリアへと振り返る。


