「いきなり城から姿を消して、どれだけ心配したと思っているんですか」
「いきなりじゃない。フィデルには言っただろ、旅に出ようかなって」
「せめて行き先くらい教えておいてください」
「探すなともちゃんと言った」
飄々と返すレオンにフィデルは眉間にしわを寄せたが、ため息と共に諦めたような表情を浮かべる。
「オレリアさんから注文の品が出来上がったと連絡をもらった時、レオン様が屋敷にいるとも教えてもらい、こうして急いでやって来た次第です。ずいぶん落ち込んでおられたので本当に心配しておりましたが、思ったより元気そうで何よりです」
フィデル副団長の視線にじっと見つめられ、エミリーは私だと気付かれてしまうかしらと繋いでいた手にぎゅっと力を込める。
「中に入りなよ、茶ぐらいだすよ」というオレリアのひと言で、レオンとエミリー、そしてフィデル副団長は屋敷に向かって移動し始める。
門扉をくぐり抜け敷地内に入ったところで、土兎が勢いよく駆け寄ってきてエミリーの目の前でぴょんぴょん飛び跳ねる。
「どうしたの?」と問いかけると同時に土兎は温室の方へと必死に駆けて行き、途中で足を止めて振り返っては「キュウ!」と鳴く。


