レオンはそれだけに留まらず、椅子から腰を浮かせて、エミリーの柔らかい頬へと手を伸ばす。
「エミリー、頬にソースがついてるぞ」
ソースを指先で拭ってぺろりと舐めて、ふっと微笑む。
大人の自分達ではなく幼児に対してのみ無駄に色気を振りまく男に対し、女性たちは顔を引き攣らせた。
「お邪魔しました」と愛想のない声で低く呟き、レオンに背を向ける。
「おモテになりますね」
本人にその気がなくても、きっと行く先々でこんな風に女性から声をかけられているんだろうなと考えると面白くなくて、エミリーはちょっぴり不貞腐れる。
レオンは素早くエミリーの隣に移動して互いの距離を詰めて、再び頬に触れた。
先ほどとは違って焦がれるように触れてくる指先や自分を見つめる熱い眼差しに、エミリーは思わず息をのむ。
「何人に言い寄られても意味がない。愛しい人以外、どうでも良い。俺はエミリーがいい」
真っ直ぐに告げられた想いに、胸が熱くなる。エミリーもレオンから目が逸らせない。
「エミリーが心に決めた人って、エトリックスクールの学生か? 裏庭に来ていた時、そばにいた男と仲が良さそうだったけど」
「裏庭で? ……誰のことかしら」


