「痛いじゃないの!」
「こっちは忙しいんだ。邪魔をするな!」
怒鳴りつけられて、エミリーは「オレリアに言いつけてやる」と心の中で繰り返し唱える。
五級品の回復薬を生成してみせたあの日からダリウスのエミリーに対する態度は変わらないが、オレリアが店にいれば意地悪をされることはない。
しかし今日は、朝早くにオレリアとアデルは果実を収穫するべく西の森へと出かけてしまい、まだ帰ってきていないのだ。
昼休憩に入った頃を見計らって店に来ればよかったと後悔していると、ダリウスが苛立ちをぶつけるようにエミリーのカゴを蹴り飛ばす。
「何するのよ!」
さすがに頭にきて立ち上がって文句を言うと、ダリウスはギロリとエミリーを睨みつけた。
「お前、目障りなんだよ。邪魔だから店の中をちょろちょろするな!」
拳を震わせながら近づいてくる姿に恐怖を覚えたエミリーの前へと、すらりとした体が割り込んできた。
「邪魔をしているのはお前の方だ」
レオンという強い味方が来てくれたことにエミリーは助かったとホッと胸を撫で下ろす。
一方、ダリウスは気に入らない奴がふたりに増えたといったようにうんざりと顔を顰めてみせる。


