花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!


ハッとして、エミリーはレオンへと顔を向ける。

声を殺して泣いているその姿に息をのみ、かける言葉も見つからない。

罪悪感で痛む胸を小さい手で押さえながら、エミリーは黙ってレオンを見つめ続けた。

雨の中、レオンは身動きもせずしばらく墓と向き合っていたが、やがて「また来るよ」と声をかけて立ち上がる。

馬に向かって歩き出した彼と目が合えば、少し憔悴した顔で「すまない」と謝られ、エミリーは大きく首を横に振る。

そんなエミリーをひょいと持ち上げて馬の鞍に乗せてから、レオンは墓へと振り返る。


「俺の大切な子があそこで眠っているんだ。明るくて優しくて、そばにいるだけで気持ちが安らぐような、そんな掛け替えのない存在だった。今でもこんなにも愛しくて、会いたくて、苦しくて堪らない」


彼の言葉に胸がつまされてやっぱり何も言えないでいると、レオンがそっとエミリーの頬に触れて穏やかに微笑んだ。


「彼女を失って、またすぐに聖女の素質を持った子と出会うなんて、まるで彼女に君を守れと言われているみたいだ」


そしてエミリーの小さな手を掴んで、その手を己の心臓と重ね合わせるように胸元へ押し付けた。