私のお墓参りをしに来たのねと、真っ直ぐ前を見つめてゆっくりと進んでいくレオンの後ろ姿を、エミリーは胸を苦しくさせながら見つめた。
大きな木の下にぽつりとある墓石の前でレオンの足が止まった。
エミリーは半ばずり落ちる形で、ひとりで馬の背から降り、彼の横に並び立つ。
墓石に刻まれた名前は「エミリー・メイルランド」。
聖女院の発表によると、エミリーは毒を煽って自死したことになっていて、その後、聖女院が勝手に火葬を済ませ、実家にはエミリーのものとされる骨だけが届けられたらしいのだ。
既にエミリーが生きているとオレリアから聞いていたが、バリーは聖女院に対し抗議を行い、そして誰のものとも分からぬ遺骨をそのままにもできず、この奥にある共同墓地に埋葬したらしい。
そのためこのお墓の下には何も埋まっていないが、やはり墓石に自分の名前が刻まれているのは良い気はしない。
生きているうちに自分の墓を見ることになろうとはと遠い目をしていると、レオンが一歩前に出て、汚れるのも気にせずその場に片膝をつき、持っていた花束を墓に供えた。
「……エミリー。守ってあげられなかった……ごめん」


