花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!


一時間以上かけて収集した十個の魔石を入れた袋を馬の鞍に掛けたあと、再びエミリーとレオンは馬に跨り、ジーンに見送られながらその場を後にする。

エミリーの浄化効果は広範囲に渡って効いているらしく、来た時とは違って森の中では凶暴化した獣の姿は見ることがなかった。

森から林へ、そして三叉路が見えて来たところでレオンは僅かに馬の走りを制御し、エミリーはレオンの腕の間から空を見上げる。

時々視界を掠める凶暴化している獣も気になるけれど、今にでも雨が降ってきてしまいそうな雲行きの怪しさも心配だ。

プランダの街に着くまで天気が持ってくれたら良いけどと考えていると、レオンがぽつりと話しかけてきた。


「エミリー、すまないが少し俺に付き合ってくれないか。行きたい場所があるんだ」


彼からのお願いに、天候の不安などすぐに頭の隅へと追いやり、エミリーは「もちろん」と笑顔で答えた。

レオンは「ありがとう」と囁きかけると手綱を引いて、来た道とは別の道へと馬を誘導し、一気に駆け出す。

この道はまさかと思っていると雨が降り出し、しかし馬は速度を緩めぬまま、やがて小さな田舎町プランダへと到着する。