花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!


「考えたな」とレオンは口元に笑みを浮かべて、泣きそうな顔をしている男性のそばへと移動する。

その様子を、息をのんで見守っていたエミリーだったが、背後でパキリと木の枝を踏む音を耳にし、ぞくりと背筋を震わせる。

肩越しに確認すれば、木の陰から三匹の獣犬がこちらを見つめていた。

じりっと足が後退した瞬間、獣犬たちは木の陰から飛び出し、一気に迫ってきた。

恐怖で声も出せぬままになんとか逃げようと走り出すが、足がもつれてエミリーは転倒する。

「エミリー!」とレオンの声を耳が拾い、助けてと心の中で願う。

しかし、粗い息遣いに振り返れば、ちょうど獣犬たちが自分めがけて飛びかかるのを視界に捉え、エミリーは「いやああ!」と悲鳴をあげる。

その一瞬、エミリーは無我夢中だった。

叫び声に続いたのは噛み付かれた痛みではなく、「キャン!」と響いた獣犬の鳴き声。

気がつけば、エミリーを中心に地は光で満ち溢れ、それはすぐに小屋の方まで広がっていく。

オレリアが屋敷の庭で行った状態と同じなため浄化効果が発動されたのは明らかだが、エミリーはそれだけにとどまらない。