草を食み始めた馬をそのままにジーンと言う管理人がいるだろう小屋へ向かってふたりは歩き出す。
扉を叩いて声をかけようとした瞬間、家の裏の方から「ひやーー!」と男性の悲鳴が上がり、レオンとエミリーは思わず視線を通わせる。
「きっとジーンさんだわ!」と言ったエミリーをレオンは素早く抱き上げて、声がした方へと走り出した。
そこにはひとりの男性が壁を背にし逃げ場を失った状態で凶暴化した獣犬に取り囲まれている。
しかもオレリアの家で遭遇したあの三匹よりも体が一回り大きく、しかも五匹もいる。エミリーは「ひっ!」と小さく悲鳴をあげた。
「エミリー、俺の目が届くところにいろよ」とレオンはエミリーを下ろし、剣に手をかけて走り出す。
抜刀と同時に炎が走り、男性に飛びかかった獣犬に命中する。
そして自分に襲いかかってきた獣犬の牙を寸でのところで剣を盾にして防ぎ、蹴りを入れて距離を置く。
「すみません、恩に切ります」と男性はレオンに声を掛け、少し先に落ちている魔導剣を取りに行き、自分に向かってきた獣犬たちからの攻撃をなんとか防ぐ。
レオンの素早く無駄のない立ち回りに獣犬たちは攻撃するのを躊躇し始め、ほどなくして男性へと矛先を変える。


