花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!


「そうか」と納得の言葉を返しはしても彼の顔は全く納得していないため、これ以上の質問を避けるようにエミリーはそっとレオンから視線を逸らす。


「三枚目は回復効果と火の魔力の複合効果の付与希望。フィデル副団長のサインが入っているから個人的な依頼だね」

「この前、火の魔導剣が壊れたとかなんとか言っていたから、きっとそうだろう」

「剣が壊れて、護衛するべき王子にも家出され、フィデルは散々だね」


哀れんだ口調でオレリアにちくりと言われ、レオンは「それは俺も悪いと思ってる」と気まずそうに呟いた。


「どうだいエミリー。自分で魔石を摘み取ってみるかい?」

「やってみたいわ!」


注文書を眺めていたエミリーはオレリアの言葉に勢いよく顔をあげ、乗り気で即答をする。

しかし途端に聞いた本人が表情を曇らせて、少し大袈裟に首を横に振った。


「だがどうしよう。私は今から大事な商談が入っている。今日はアルフォンが休みだからアデルは店に出ないといけない。場所は西の森にある私が管理する庭。馬を走らせたら半日もかからないが子供の足で行ける距離ではないし、まして外は凶暴化した獣でいっぱいだ」