それでもレオンの足を離さない土兎に、言葉が通じれば良いのにとエミリーは思わずにいられない
「本当はもっと思い切り庭を走りたいわよね」
「最近、凶暴化した獣を町でも多く見かけるようになったし、屋敷の中にいた方が身のためだろうね。私の魔力もそんなに長くは持たないだろうし、あの様子じゃ効果が切れた瞬間襲いかかってくるだろうよ」
「しかも獣犬は、兎みたいな小動物系だけでなく、人間の子供も狙う。エミリーも気をつけなくちゃダメだ」
オレリアの言葉を受け、レオンは厳しくエミリーに注意する。
思わず助けに飛び出したけれど自分自身も危うかったと知り、エミリーは体を震わせた。
嫌な予感がして門へと目を向ければ、三匹だった獣犬が四匹に増えている。
ギラリと光った双眸がまるで自分を餌とみなしているかのようで、エミリーは恐怖に慄きながらレオンの手をしっかり握りしめた。
レオンはそんなエミリーの姿に「土兎と一緒だな」と笑みを浮かべて、「屋敷の中へ戻ろう」と手を繋いだまま歩き出す。
屋敷の中へ入ってオレリアがしっかりと扉を閉めると、エミリーは気怠げに息をつく。
「獣犬が外をうろついているなら、お店どころか温室にも気軽に行けなくなるわ」
「仕方ないね、外に出たい場合は私かアデルに声をかけな」
「俺もあと数日はいるし、護衛するよ」


