「きゃっ!」と悲鳴を上げ、咄嗟に土兎を抱きしめたエミリーを守るように今度は強い熱風が吹き荒ぶ。
獣犬は熱風に邪魔される形で進路を変え、他の二匹と合流するように門扉へと進んでいった。
「エミリー、大丈夫か?」
駆け寄ってきたレオンに声をかけられ、今の熱風は彼が起こしたものだと即座に理解する。
「レオン様もオレリアも、ありがとう。助かったわ。あなたは大丈夫?」
腕の中で震えている土兎に視線を落として、足に怪我をしているのに気がつく。
エミリーは患部に手をかざし、素早く光の魔力での治療を施す。
土兎は恐る恐る地面へ降りると、元気まで取り戻したかのように嬉しげに庭を走り始めた。
けれど、まだ門扉から離れずに中の様子をうかがっている獣犬たちに気がつくと、慌てふためきながら舞い戻ってくる。
エミリーの隣にいるレオンの方が頼りになると本能的に悟ったのか、彼の足元に身を隠すようにぴたりとくっついた。
「大丈夫よ。オレリアの魔力の効果がある間は入ってこれないわ」
ピンと立っていた耳は倒れていて庭を見つめるつぶらな瞳はどこか物足りなさそう。


