吹き込んでくる風は冷たく、目覚めた時よりも外も薄暗くなってきている。
椅子を移動して窓から庭を見下ろすも、「わからないわ」とすぐに諦める。
ここから今のエミリーの両手ほどの大きさの生き物を見つけるのは困難だ。
椅子を降りようとしたその時、庭から「キューッ!」と甲高い叫び声が聞こえてきて、慌てて視線を戻して息をのむ。
土兎が三匹の獣に追いかけられていて、必死に温室の方へと逃げていく。
「大変だわ!」
エミリーは椅子から飛び降りて、慌てて部屋を飛び出す。
階段を降りていくとちょうど廊下を歩くアデルの姿が視界に入り、「アデルお願い、玄関の扉を開けてちょうだい!」と声を張り上げた。
開けてもらった扉から庭に出れば温室の方から獣の唸り声が聞こえてきて、転びそうになりながらもエミリーは一生懸命駆けていく。
温室の脇に四匹の姿があり、土兎が対峙しているのは獣犬だ。
明らかに凶暴化しているその様子にエミリーは一瞬怯むも、近くにあった太い枝を掴み取って、自分よりも数倍大きい獣犬に対して恐怖で震えながらも威嚇を繰り返す土兎の前へと勢いよく飛び出していく。
「さっさと庭から出ていきなさい!」


