言いながら、エミリーはパタパタと足音を響かせてオレリアの元へ。拳を握りしめ、しかめっ面で不満を訴える。


「もう、どうして彼がレオン王子だと教えてくれなかったの? そもそもなんで、恋人が三十人いるだなんて大嘘をついたのよ。まんまと信じちゃったじゃない」

「教えなかったことは悪かったと思ってるよ。ほんの悪戯心があったのも認める。だけどね、どうして恋人が三十人っていうのが嘘だと思うのかい? 視察と行って各地を巡っているんだ。しかもあの顔だよ。女が放っておかないだろうに」


確かにレオンほどの美男子なら女性が放っておかないだろうが……、それを良いことに彼が女性にだらしないかと言えば、また別の問題である。


「モースリーのマルシェで会った冒険者のあの男ならともかく、レオン様は一切浮ついてないもの。悪いけど嘘にしか聞こえないわ」


エミリーがきっぱり言い放つと、オレリアは「もう効かないか」と残念そうな顔をする。

先ほどレオンが座っていたのと同じ場所によいしょと腰掛けて、エミリーは心なしか真剣な顔でオレリアへ「あのね」と話を切り出した。


「相談があるんだけど、私が生きていることをレオン様に話したいの。オレリアはどう思う?」

「話したいならそうすればいいさ。そうすればレオンも大喜びするだろうし。ただ……」