「土兎は警戒心が強いのに、こんなにすぐに懐くなんて珍しいな」
土兎は群れで生活する獣で、自分の仲間かどうかを魔力の匂いで判別するという。
もし人間に対してもそれが可能なら、そして目の前にいるのが以前授業で傷を直したあの土兎だと言うならば、姿形は違っても魔力の匂いでエミリー本人だと認識したのかもしれない。
エミリーが恐々と土兎を撫でていると、居間にオレリアが入ってきた。
「おやおやどうしたんだい、まだモースリーアカデミーは長期休暇に入ってないだろ」
「家出してきたんだ」
対面に座ったオレリアに対してレオン肩を竦めて答え、エミリーはなんですってと勢いよくレオンを見上げた。
どうして家出したのか話してくれないだろうかとエミリーがうずうずしていると、オレリアがエミリーの肩でくつろいでいる土兎に目を止め、ふふっと笑う。
「土兎を連れて家出とは、可愛いじゃないか」
「実は、この土兎の怪我をエミリーが治したらしいんだけど、カルバード学長に噛み付いて、獣の餌にされそうになっていたから俺が奪ったんだ。来る途中で野に返そうと思ったけど、俺から離れないからそのまま連れてきた」


