「転ばないように手を繋ごうか」
「う、うん」
気恥ずかしさが先に立ったが、エミリーは「私は三歳児よ」と自分に言い聞かせてぎこちなくレオンと手を繋ぐ。
視線を上げるたびレオンと目が合い、無邪気に笑い返すのが徐々に辛くなっていく。
気もそぞろなエミリーはレオンの心配通り小石に躓いて転びそうになる。
しっかりとレオンが支えてくれたため前のめりに倒れずに済み、「お兄ちゃんありがとう」とエミリーが感謝を述べると、自分を見つめる眼差しがわずかに翳った。
「かわいいな。エミリーを見ている気分になる」
「私エミリーよ」
「俺の大好きな女性もエミリーって名前なんだ」
それって私のこととエミリーはドキリと胸を高鳴らせたが、レオンの顔があまりにも悲しそうで居た堪れなくなり、繋いだ手にぎゅっと力を込めた。
オレリアの屋敷へ戻ると、アデルがオレリアを呼びに店に行き、エミリーはレオンのために飲み物を出そうと奮闘する。
紅茶を淹れるべくポットを火にかけようと、エミリーが火魔法を扱える魔導具をコンロ脇の収納スペースから取り出したのを見て、外套を脱いだレオンが慌てて駆け寄ってくる。


