会えて嬉しい気持ちのまま笑いかけるが、自分を見た彼にキョトンとした表情をされ、そうだった私は子供だったんだとエミリーは歯痒くなる。
レオンはしゃがみ込み、優しく笑いかけながら男が落としたポシェットをエミリーに手渡す。
「怪我はないか?」
「平気。助けてくれてありがとう、お兄ちゃん」
お礼を言って再び笑いかけたエミリーに対してレオンはほんのわずかに目を見張る。
食い入るように見つめてくるレオンから目を逸らせないでいるエミリーの横にアデルが並び立ち、深々と頭を下げた。
「私からも感謝申し上げます」
「……お前確か、オレリアのところの」
顔を上げたレオンにアデルは「はい」と首肯してから、「私がついていながらすみません」と気落ちした様子でエミリーのスカートの裾の土を払い落とした。
「この子は知り合いか?」
「はい。オレリア様の養女でございます」
「オレリアが養女?」
レオンは唖然とした後、エミリーに視線を戻して優しく問いかける。
「名前は?」
「……エ、エミリー・リングハットです」
「なんだって」
レオンはふらりと立ち上がり、片手で頭を抱えながら「確かに似てるけど、何も名前まで変えさせなくても」とため息混じりに呟いた。


