抱っこされている体勢のため、これほどまでに至近距離で彼の顔を見るのも初めてであり、ついエミリーは見惚れてしまう。
「なんだと! 舐めた真似してくれるじゃないか。おい、この男の身ぐるみ剥がすぞ」
エミリーのポシェットを握りしめたまま男は仲間の四人を呼び寄せる。
ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべた男たちが横に並ぶと、美麗の彼ことレオンはエミリーを地面に下ろし、男たちと向き合った。
「ちょうどいい。こっちはずっとムシャクシャしてたんだ。五人まとめて相手になってやるよ」
剣を抜いて戦闘態勢に入ったレオンを見て、男たちは動きを止める。
彼から放たれる殺気を感じ取り、男たちの中のひとりが「殺される」と呟いた。
一瞬でレオンはエミリーを締め上げていた男の間合いに入り、その首元に刃先を突きつける。
「五秒だけ待ってやる。そのポシェットを置いてくなら……って、おい!」
数を数えるどころか言い終えるよりも先に男はエミリーのポシェットをあっさり手離す。
身を翻し、仲間と共にあっという間に逃げて行った。
「張り合いがないな」
つまらなさそうに剣を収めたレオンへとエミリーも駆け寄り、腕を引っ張った。


