市場のさまざまな店を見て回り、侍女や弟たちにお菓子の詰め合わせを四箱ほど購入。
そして、庭いじりが好きな父には花の種を数種類、編み物が好きな母には毛糸をいくつか購入する。
種と毛糸に便箋や封筒をまとめて入れてもらった袋を右手でしっかり握りしめて、箱を抱え持つアデルの隣りをのんびりとした足取りで歩く。
彼への贈り物をなかなか決められずにいるエミリーに、アデルが低く話しかけた。
「エミリーちゃん、ポシェットは私が持った方が安全かも。街のごろつきたちに目をつけられたみたい」
驚いて顔を上げるとアデルの真剣な眼差しと視線が繋がり、エミリーは息をのむ。
恐る恐る肩越しに後ろを振り返ったがエミリーの視界は低く、行き交う人々も邪魔して何も見えない。
しかしすぐに、三歳児がこんな大金を持っていたら目をつけられても当然よねとアデルの言葉を受け入れる。
種などが入った袋をその場に置いて、急いで硬貨袋の入ったポシェットをアデルに渡そうとしたが、駆け寄ってくる足音を耳が拾い、エミリーは咄嗟にポシェットを抱え持った。
「エミリーちゃん!」
アデルが叫ぶのと、エミリーの小さな体が大きく突き飛ばされたのはほぼ同時だった。
「金をよこせ」


