侍女たちにはみんなで食べられるお菓子のようなもの。弟たちも食べ盛りだからそれぞれの好物で良いだろう。両親には何か心のこもった物を贈りたい。
それからもちろん美麗の彼にも。
エミリーは美しく微笑む彼の姿を想像して頬を赤らめながら、何がいいかなと市場に並ぶ露店に視線を走らせる。
「エミリーちゃん、手紙なんてどう? その代わり、魔導具の火ペンで書いて読み終わったら燃えるようにしないといけないけど」
「手紙良いわね。伝えたいことがいっぱいあるもの」
並べられている便箋と封筒を眺めていると四十代くらいの女性の店主が「まぁ」と声を上げた。
「可愛らしいお嬢さんが手紙を書くのかい」
「うん。今ね、いっぱい文字を書いて頑張ってるの。だからお手紙書きたい」
「あらー。偉いこと。頑張り屋さんのお嬢ちゃんだから、ちょっと安くしてあげるよ。それから、これはおばちゃんからのプレゼントだ」
店主から棒付きの飴をもらってエミリーは両手を上げて喜び、その場で便箋と封筒を選んで購入。
自分でポシェットからお金を出して払えば、またそれで「賢い子だね」と褒められ、もう一個棒付き飴をもらう。
手を振って店の前を離れてから、「買い物の時は三歳児の姿に限るわ」とエミリーはオレリアそっくりにほくそ笑んだ。


