こんなにクタクタになって稼いだお金よりも多い金額を彼からもらってしまったんだと考えると申し訳なくて、手にした硬貨袋が余計に重く感じてしまう。
「あいつは頑固だから現金のままなら受け取らないだろうよ。……それなら贈り物でもしたらどうだい? そのうちオレリア商会にふらっと姿を見せるだろうし、その度に形を変えて少しずつ本人に返せばいい」
ここにいたらいつか彼と会えるんだと、希望が期待を膨らませていく。
エミリーは表情をぱっと明るくさせて、大きく頷いた。
「そうね。市場を眺めながら考えてみるわ。もし彼が明日、私がいない間にやって来てもちゃんと引き止めておいてね」
「あぁ。引き止めるのは良いが、あの子が私の言うことを聞くかは分からんけどね」
「ふふふ」と笑ったオレリアにエミリーは抱きついて、「オレリア、いろいろありがとう」と微笑みかけた。
翌日、エミリーは斜め掛けにした子供用の小さなポシェットに硬貨袋を入れて、アデルと二人で意気揚々と街の市場へ繰り出す。
「お父様とお母様は何が喜ぶかしら。弟たちにも買っても良いわよね。それからシアメルたちにも何か」


