ゴツゴツとした硬貨袋を目にした瞬間、エミリーの眠気は吹き飛んでいく。
ベッドの上に立って、受け取った硬貨袋を持ち上げながら「わーい!」とその場でくるくると回転する。
そしてひとしきり喜んだ後、エミリーは硬貨袋をオレリアへと返した。
「生活費とこの前買ってもらった服の代金を抜いた分を、両親の元に送ってちょうだい」
「了解したよ。責任持って両親の元に届けるからね」
働いて得たお金から必要経費を抜いたお金は、すべてオレリアから両親の元へと送ってもらっているのだ。
「今日は働いたわー」とベッドに再びぺたりと座り込んだエミリーの膝の上に、オレリアはもう一つの硬貨袋を置く。
「以前預かったものだよ」
「あぁ、彼がくれたものね。忘れていたわ」
美麗の彼を含めたマルシェでのやり取りを思い出して込み上げてきた懐かしさに、エミリーは少し寂しくなる。
しゅんとしたエミリーに、オレリアは提案する。
「明日、アデルと一緒に市場にでも行って、ご両親に何か買って来ると良い。一緒にまとめて送ってあげるから」
「街を出歩いていいの!?」


