「オレリア様がお小遣いをあげたことには驚きました」
「確かに、私もびっくりしたわ」
エミリーはカップをテーブルに戻し、スカートのポケットから50エネル硬貨を取り出した。
「これでアデルにお菓子を買ってきてもらおうかしら。何が買えるかしら?」
「そうですねぇ」
エミリーとアデルが一緒に悩み始めた時、バンと大きな音を立てて居間の扉が開かれ、オレリアが小さな箱を小脇に抱えて室内に入ってきた。
「エミリー、追加注文だ」
ほんの一瞬唖然とした後、エミリーはソファーを降りてテーブルに置かれた箱の中身を背伸びをしつつ覗き込む。中に魔石が十五個入っていた。
「追加注文って……魔石じゃない。魔法付与しろってこと?」
「ご名答。前金はもう受け取っているんだから、しっかりやってくれ」
「前金。……もしかしてさっきの50エネル? お小遣いって言ったじゃない」
「バカだね、本気にしたのかい? 私が小遣いなんてやるわけないだろ」
オレリアに笑われて、本気でお小遣いだと思って喜んでいたエミリーは悔しくなる。
「だったら返すわ。私、魔法薬作って疲れてるの。魔法付与なんて無理よ、できない」


