「だめだわ、三歳児が心地良すぎる。挨拶しただけなのにみんな褒めてくれるし、可愛い可愛いって言ってくれるし、オレリアはお小遣いくれるし、お菓子だってこんなに」
カゴの中にはパン屋の女主人にもらった飴玉の袋の他に、薬草庫で見習いの女性に「作りすぎちゃって」と手作りのクッキーがたくさん入った箱をもらい、店から屋敷へと戻ってくる間にも今度は花屋の男性店主が「貰い物なんだけど食べきれないから」とマドレーヌを六個もくれたため、空になるはずだった小さなカゴは山盛りだ。
早く元の姿を取り戻して、大切な人たちに自由に会いに行けるようになりたい……のに、このまま元の姿に戻らなくて良いかもなんて時々考えてしまう自分に対して両手足をバタバタさせて悶えていると、アデルが子供用のコップと湯気の立っているティーカップをトレーに乗せてキッチンから戻ってきた。
「エミリーちゃんは大人気ですから、みんな甘やかしたいんですよ」
「私は幸せ者だわ」
自分に良くしてくれるみんなの顔を思い浮かべていると、相変わらず手厳しい態度のダリウスまで思い出してしまいエミリーは眉根を寄せる。


