罵り声が聞こえた方へと目を向けると、森の中から弓を持った男がひとり現れ、その姿にエミリーは恐怖で体を震わせる。
顔を隠した体躯の大きなその男は、以前エミリーの部屋に侵入したあの男で間違いない。
男が弓を捨て、剣を鞘から引き抜き、殺気を纏って歩み寄ってくる。
このままでは自分は確実に殺される。けれど矢じりに毒か何かが仕込まれていたらしく、吐き気と痺れで体が言う事をきかない。
「マルシェでオレリアと会った時、私を付けていた男はあなたね」
ぼやけ始めた視界の中にある大きな男の姿をエミリーは力いっぱい睨みつけた。
騎士団長が消えたのはわざとだ。そして入れ替わるようにこの男が現れたのも偶然じゃない。
マルシェでオレリアはこの男に「親玉」がいる事を示唆していた。
となるともう、この状況を仕組んだ相手は多くの人に崇拝されているあの人しか考えられない。
「大聖女様は最初から私を殺すつもりだったのね」
憤りを言葉にして絞り出すと、男が「ひひっ」と気色悪い声で楽しそうに笑う。
「目障りな存在はここで消すことになっている」
男のひと言で、憎しみと怒りと悔しさがエミリーの中で一気に膨れ上がる。


