そんなことを考えながら左右の窓から外を見回しているうちに、エミリーはあることに気がついた。
黒い馬に跨り並走していた騎士団長の姿がいつの間にかなくなっている。
モースリーの町を出るまでは確かにいたはずなのにと不思議に思いつつ、馬車も再び走り出す気配がないため「すみません」と御者台に向かって呼びかける。
返事はなく、髪留めを制服のポケットに入れてから、エミリーは外の様子を見るべく馬車の扉を押し開けた。
「そんなまさか」
恐々と馬車を降りて前方に回り込み御者台を確認したが、そこにいるはずの町で雇われた御者の男の姿はなく、紐に繋がれた馬だけが残されていた。
私は置き去りにされてしまったのだろうか。そう考えれば、ここに止まっているのは危険かもしれないと本能が警鐘をならす。
ひとまずこの薄気味悪い森の中から出ようと身を翻した時、ヒュッと風を切る音を耳にし、次の瞬間、エミリーは右腕に強い痛みを感じ、馬が大きく嘶いた。
馬の胴体に矢が刺さっている。それはエミリーの右腕を掠めたもので間違いない。制服が破れ、弓による傷口から血が流れ出ている。
逃げなくちゃと気持ちが焦る一方、ぐらりと視界が揺れ、エミリーはその場に崩れ落ちた。
「チッ、一撃で仕留められなかったか」


