エトリックスクールの荷物はすべて実家に送ると騎士団長から言われたが、あの学長なら「捨ててしまいなさい」と言いかねない。
机の引き出しに入れてあるお小遣いも諦めるべきだろう。
項垂れていたエミリーだったが、リタや想いを寄せる彼、両親に弟、そしてオレリアの顔を順に思い浮かべていけば、徐々にここで負けたくないという気持ちが膨らみ出す。
この理不尽さを跳ね除けられるほどの強さが欲しい。
自分の無力さを痛感すると同時に、ロレッタが煙たがっていたオレリアの存在がエミリーの中で大きくなっていく。
絶対にオレリアの元へ舞い戻り、生き抜く術を身につけよう。力をつけてみんなにだって会いに行ってみせる。
その希望を胸に何があろうと挫けないと心に誓った時、窓から差し込んでいた陽が陰り、馬車が森に差し掛かった。
ロレッタの屋敷を出てから、街中で馬車を乗り換えたりはしたが、それからまだ一時間ほどしか経っていない。
十分な陽がある中でのこの鬱蒼とした薄暗さに気味の悪さを覚えたその時、急に馬車が停止した。
乗り換えた馬車は粗末な代物と言っていい。
どこか不具合が起きたのか、それとも馬車馬に何かあったか。


