腕を拘束していた縄を解いてもらえただけマシかしらと、エミリーは赤くなった手首をそっと撫でた。
聖女クラスの生徒たちとは折り合いがつかなかったが、クラスメイトたちにはとても恵まれ、エトリックスクールでの生活は本当に楽しかったなとかつての日々に思いを馳せる。
特にリタとは卒業後も友人であり続けたかったのにとため息がこぼれる。
連行された時、目の前に立ち塞がってくれた彼女の真剣な顔を思い出せば、涙が込み上げてくる。
最後まで無実だと信じてくれていたリタには、別れの挨拶くらいさせて欲しかったと。
それにリタとあとひとり、エミリーには別れを言いたかった人物がいる。
裏庭で会った名も知らぬ美麗な彼だ。
街を案内してもらう約束をしていたのに、突然いなくなったら驚くだろう。
そしてその理由をフィデル副団長から聞いた時、彼はどう思うだろうか。そんな娘だとは思わなかったと軽蔑されるかもしれない。
深いため息をついてから、そっと蝶の髪飾りを取り外す。
両手で包み込むように持った髪飾りをじっと見つめて、これだけでも手元に残って良かったと心底安堵する。


