ロレッタはわずかに目を閉じた後、なぜか優しくエミリーに微笑みかける。
突然表情を和らげたことに言い知れぬ恐怖が湧き上がり、エミリーはぞくりと背筋を震わせた。
「わかっています。ブレスレットは売ってお金にしたかったのね。実家が頼りなくオレリアに借りを作らなくてはスクールに通えなかったくらいだもの、あなたも辛かったのでしょう。その点は同情するわ」
人が良すぎて頼りなく思える時もあるが、父も母も大好きで尊敬している。
オレリアが支援を申し出た時も、娘のことだから自分たちでなんとかしたいと渋っていた。
しかし、ゆくゆくは弟子のひとりとして自分が得た知識のすべてをエミリーに託したいとオレリアが熱く訴えたことで両親が折れたのだ。
たとえ落ちぶれていても辺境伯の爵位を持つ身、プライドはある。
その上でオレリアの提案を受ける方が娘にとって良いと判断した両親を卑下されエミリーは怒りを覚えた。
それにエミリーには毎月両親だけでなくオレリアからも、ちょっとしたお菓子と共にお小遣いが入った小包みが届く。
学内で販売されているお菓子やペンやノート、生活用品などを買っても十分に余る金額なため、エミリーには盗みを働いてまでお金を得る必要がまったくないのだ。


